ビジネスガイドを読む<流通編>

2001年10月号

日本市場攻略を狙う外資小売
−そのプロフィールと近年の動向−

2001年9月にビジネスガイドで取り上げた企業事例をもとに、より深く詳細な分析を行っています


 スーパー4位で経営再建中のマイカルが9月14日、東京地裁に同社の子会社6社とともに民事再生法の適用を申請した。会社更生法を主張するメーンバンクの意向を覆し、社長解任クーデターを起こしての選択である。しかし、同法による再建を直接主導した山下氏らへの責任論が浮上、9月28日には体制刷新、新体制のもとで引き続き民事再生法の枠組みで再建を目指すこととなった。小売業「大手5社」の一角が崩れ、本格的な流通の選別が始まった(週刊ビジネスガイド2001年9月20日号10月4日号参照)。
 このプロセスを通じて、提携先候補として名前が上がったのが、世界第1位の小売業ウォルマートである。世界第2位のカルフールもすでに日本に出店している。マイカルと有力外資小売業との提携が決定すれば業界の勢力関係は大きく変化する。
 従来、日本で成功している外資流通といえば、高級ブランド店やトイザらスなどのカテゴリーキラーに限られていたが、チェーンストアシステムを採用する巨大小売業の本格進出がここにきて注目を集めている。ここではその簡単なプロフィールと進出の狙いについて紹介するにとどめるが、日本の流通に与えるインパクトに関しては様々な視点から論文等も発表されており、大きなインパクトをもたらすことは間違いない。

■巨大な欧米小売業

 日経流通新聞(2001年10月4日)が発表した2000年度世界の小売業ランキングによれば、トップのウォルマートの売上高は何と22兆円を超え、上位6グループは円換算で売上高が5兆円を超える。上位6グループはいずれも低価格販売と幅広い品揃えで売り上げを大きく伸ばしている企業であり、上位寡占が急速に進んでいる。
 とくにウォルマートについては売り上げだけでなく、営業利益、時価総額でもダントツトップ、1999−2000年の1年間の増収額は4兆5000億円、その額はKマート1社分に匹敵する。新たに食品スーパー部門でも全米1位になるなど、アメリカ国内での業容拡大を加速しているが、同社の食品分野強化の動きが他の大手食品スーパーの再編につながっている。
 日本でトップのイトーヨーカ堂も世界の中では15位で上位企業との差は大きく、対前年伸び率でも低い伸びに留まるなど、日本企業の伸び率は総じて低く、いまひとつ元気がない。

■2000年度 世界の小売業 売上高上位20社(円換算)
*金額は各社の決算期末時点でのロンドン為替レートで円に換算したもの
(日経流通新聞 2001年10日4日 より作成)

 

■魅力ある日本市場

 それでは欧米の流通大手はなぜ日本に上陸してくるのか。
 日本のスーパー業界は2001年9月で34ヶ月連続の前年割れを続けており、経営環境は極めて厳しいが、グローバル戦略という観点から見れば日本市場は極めて魅力的だ。1400兆円の個人金融資産を有し、消費意欲が減退しているとはいえ、年間の消費支出はアメリカに次いで世界第2位の市場である。21世紀の成長市場とアジアを位置づけている欧米の流通大手が、日本市場攻略に向けて本格的な攻勢をかけてくるのは当然の成り行きである。
 コストコ、カルフールに続いて、売上高世界第6位のメトロも丸紅と合弁会社を設立し来年夏には1号店を開店する準備を進めている。ウォルマートもすでに日本事務所を開設しているという。

■激動期にある日本の流通

 2010年までを見通すとつぎの三つの要因から日本の流通は激動すると我々はみている。
 一つは、1990年代までチャネルリーダーの座にあった国内の組織小売業の綻びが鮮明になることである。その典型がマイカルである。デフレ圧力を受け、販売数量増・単価減による水没店が急増している。メーカーの販管費に依存したチェーンオペレーション経営の仮面が剥がれていく。企業間格差も鮮明になる。
 第二は、カルフール、コストコ、ウォルマートなど外資小売の日本進出の本格化である。弱体化した日本の組織小売業の買収も含め、急拡大も予測される。
 第三は、EC普及の加速化である。ブロードバンド時代到来などEC化を加速させる要素は多数ある。EC市場は確実に波及し定着していく。
 新規参入する側からみれば、変化の時こそチャンスである。激動する流通環境が外資小売の参入を促進し、それによって動きが一層進む可能性は強いと思われる。

■アジアで進む流通再編と成功条件

 日本に先立って、アジア各国で欧米小売業主導の流通近代化、企業の再編が進んでいる。当社戦略ケース(カルフールが席巻するアジアの流通再編)では韓国、台湾、タイ、マレーシアにおける外資小売業の参入状況について分析し、外資小売業の海外市場参入の成功条件として、
1)不況などで、現地小売市場に参入余地ができること
2)その後、経済成長などにより出店余地が拡大すること
3)業態構造の転換に合った業態で進出すること
4)店舗フォーマットを現地化すること
の4点をあげている。
 今の日本市場をみると、まさに1)が起こりつつある状況といえる。地方の百貨店、GMS業態の衰退から生まれた小売の空白遅滞世界に、ユニクロなどSPA、コジマ電器など家電量販、マツモトキヨシなどドラッグストアといったカテゴリーキラーが出店を進めて成功を収めている。
 欧米、とくにヨーロッパにみられるような大手小売への売り上げ集中が日本で進むとは思えないが、多様な市場環境下を生き抜いてノウハウを身につけた欧米の巨大小売業たちが、日本市場について学習しながら、ポジションを確立していくことは十分考えられる。

 成熟し多様化が進んだ日本市場では、大規模な企業買収でもない限りは欧米企業が一気に売り上げを拡大することは考えにくいが、日本のメーカーにとっては、これからの成長の源泉となるアジア市場も含めて考えると、極めて重要な取引先になることは間違いない。日本市場だけでなく、急成長するアジア市場をどう攻めるか、という視点からつきあい方を考えていく必要がありそうだ。さらに、彼らが主導するWWRE、GNXなどのe−マーケットプレイスの取引が日本の流通企業も巻き込んでさらに巨大化する可能性は極めて強く、取引慣行の見直しを迫られることにもつながる。
 小売・卸・メーカーそれぞれにとって、巨大小売業の参入がどのようなインパクトをもたらすのかを改めて捉え直し、自社の対応についてのシナリオを準備すべき時を迎えている。




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