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@nifty『シュガーな俺』


第2章:最後の晩餐(2)(8/11)


 昼間、課長と部長には入院のことを報告した。入院と言っても仕事にはそれほど支障が出ない形態とわかったので、その点はあっさり納得してくれたが、それ以前にまず、僕が糖尿病になったという事実自体に二人とも驚いていた。それはそうだろう、本人が一番驚いていたのだから。

 「そんな体型には見えないけどねえ。どっちかっていうと痩せ型でしょ? いや、私の叔母がやっぱりそうでね、でも叔母は風船みたいな体型だったからさぁ」

 部長が首を傾げながら言った。

 「片瀬君は、その、けっこう暴飲暴食とかする方なの?」

 「そうですね、実は、酒はかなり……。で、普段はそれほど食べないんですけど、酒が入るとけっこう暴食しちゃうんですよ。そういう意味では、思い当たる節はありますね」

 「思い当たる節」は、実は彼らに話した以上にあった。

 共働きで子供のないわが家での家事は原則として完全分担制で、めいめいが自分にとって比較的負担が少ないと感じる仕事を受け持っていた。それがうまい具合に分かれたので、なんら衝突はなかった。僕はわりと「片づける」のが好きなので、掃除や洗いもの、ゴミ出し(ちゃんと分別する)などは僕の担当、逆に「片づける」のが大嫌いな妻の奈津は、料理と洗濯と家計管理一般。おおむねそんな職掌分担によって、片瀬家は運営されていた。
 
 ただ、三十歳の奈津が勤務する商社・トーショーで(いまだ平社員である僕を差し置いて)主任に昇格してからは、多少、その秩序に乱調が生じはじめた。わりと体質の古い会社であるにもかかわらず、女の奈津に主任の役職を与えたことからもわかるとおり、トーショーは奈津に期待して重責を負わせるようになっていたのだ。残業がかさみ、紙パルプの買いつけに中国や東南アジアへ出張して何日も家を空けることもザラで、早めに帰宅して二人分の食事を用意するなど望むべくもなかった。

 だからといって、ろくに料理を作った経験もない僕が突然役割を交代できるわけもない。面倒でつい、「食事はめいめいで」ということにしてしまう。で、どうせ外食だし、奈津も帰りは遅いのだから、だれかと飲みの約束を入れようとしてしまう。以前は、肝臓のためにも外で飲むのは週イチ程度に収めていたのに、それがなしくずしに週に二回、三回、ときにはほぼ連日、と格段に増えてきていた。

 年明けあたりからそうだったから、その間どれだけアルコール漬けの高カロリー生活をしていたか、ちょっと想像するのもげんなりするほどだったのだ。

 そう考えると、完全に自業自得だ。「日頃の不摂生が祟った」。ただそれだけのことでしかない。それはよくわかっているつもりだが、それにしてもむごすぎる。僕が知るかぎり、糖尿病の人というのは、いつもいつも食べる量を制限して血糖値を気にしていなければならないようだ。当然、僕もそうなるのだろう。今後は厳密に「週イチ」ペースを守るから、それは神かけて誓うから、そのかわり、今回のことは「なかったこと」にしてもらうわけにいかないのか。

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