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■第16章:第二の宣告(2)(11/17)
診察室の星野医師は、前回同様、なにか自分の居場所をいまだに見つけられていないようなおぼつかない物腰で僕を迎えた。
「その後、血糖値の推移はいかがでしたでしょうか」
言われるままに僕は、この二週間、朝昼晩毎回欠かさずつけていた血糖値の記録を提出しながら、おそるおそる、勝手にインスリンの量を増やしていたことを包み隠さず打ち明けた。しかし、結果として僕の判断は適切だったということなのか、星野医師は別に僕を叱責するわけでもなかった。まずまずのコントロールになっているようなので、ひきつづきその量で注射を続けるように、という指示を下しただけだ。
前回は患者の前であからさまに動揺していたことを思うと、この妙にあっさりした対応はいったい何なのだろう? 僕が首を傾げていると、彼女は早くも次回診療の日にちのことに話題を移している。
ちょっと待て。前回あらためて採血したときの結果はどうなったんだ?
「あの、精密検査の結果が今日わかるってお聞きしていたように思うんですが……」
おずおずとそう切り出すと、彼女ははっとしたような顔になって、処方箋を書く手を止めた。
「あ、そうだ」
大丈夫かな、この先生?
慌てて端末を操作してデータを引き出した星野医師は、そこに表示されているなんらかの数値に目をやるなり、眉をひそめた。もともと常にひそめているように見える眉をさらに寄せて。
「あー……」
息が漏れるような声でそう言ったきり、黙っている。
それはまるで、自分が買っていた株が暴落した瞬間を目の当たりにした人間のようなふるまいだった。
どう考えても、この人は臨床医としての適性が欠けていると思う。患者をいたずらに不安に駆らせてどうしようというのか。
「あの、なにか……?」
「1型に、遷移しちゃってますねぇ……」
「えっ?」
「GAD抗体が陽性反応示してるんですよ。……1型です」
しばし、絶句した。
1型って、あの1型のことか? 生涯インスリン注射が必要だという、あの1型?
どういうことなんだ? 僕は2型糖尿病ではなかったのか。そして、主に不摂生が原因で発症する2型と、ウィルス感染など突発的な要因から自己免疫反応で発症すると言われる1型とは、スタート地点からして違っていて、交叉性はないのではなかったか。
「そ……そんなことあるんですか? 途中で変わっちゃうなんてことが?」
「まあ……なくはないですね」
「なぜなんでしょうか……」
「さあ……理由はよくわかりませんが……」
まただ。また動揺して、説明がしどろもどろになっている。
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