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■シュガー通信:第5号(1/22)
前回にひきつづき、低血糖の話をさせてください。今まででいちばん怖かった低血糖体験の話。
去年の夏のことです。ちょっと前から、浴衣が欲しいな、と思っていました。それまで作ったことはなかったのですが、ちょうど、浴衣を着て行くのがふさわしいイベントの予定がいくつかありました。こうしたけっこう大きな買い物に関しては、慎重に時間をかけて検討するのが常道でしょう。しかし困ったことに僕は、大きな買い物であるほど、衝動的に実行してしまう傾向が強い人間なのです。
たぶん、変に身構えると、大げさに考え過ぎて、面倒くさくなってしまうからでしょうね。
その日僕は、勤務先からまっすぐに帰宅するつもりで電車に乗りました。ところが、某ターミナル駅に着いた時点で、急に思いついてしまいした。「そうだ、今日これから、デパートで浴衣を買ってしまおう」。それだけならまだよかったのですが、僕はちょっと、欲張ってしまいました。どうせ帰りが遅くなるなら、夕飯も外で食べてしまおう。しかし、今からインスリンを打つと30分待たなければ食事ができない。その時間がもったいないから、いっそその待ち時間に買い物を済ませてしまおう。
経験者として、心から忠告いたします。インスリンを打ってから、買い物をしてはいけません。特に、慣れないものや、選ぶのに時間がかかったりするものを買うのは、非常に危険です。そんなことは、聞くまでもないことですって? そうですよね。どう考えても、僕が浅はかすぎたのです。
なにしろ浴衣を買うこと自体が初めての経験ですから、何をどうすればいいのかさえわかりません。ベテランっぽい年配の女性店員さんから、手取り足取り、一から教えてもらう形になります。柄を選び、試着して、帯や下駄も合わせて選び、そして帯の結び方のレクチャーまで受けていたら、30分は瞬く間に過ぎていきました。
ああ、もう今すぐ食べはじめなければならないくらいの時間だ、と気持ちは焦るのですが、店員さんは幸か不幸かたいへん親切な人で、洗濯するにはどうすればいいか、その後どうやって干したらいいか、といったことまで懇切丁寧に、途切れなく教えてくれます。先を急いでいるから、と話を遮って立ち去ればいいものを、つい、悪いと思って、彼女が話し終えるのを待ってしまいました。
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