平山瑞穂
シュガーな俺



シュガー通信:第9号

 よく、テレビで大食いグランプリみたいな企画をやっていて、ラーメン20杯を平気でたいらげているような人を目にしますが、食事療法的観点からあれを見ていると、気が狂いそうになります。

 ラーメン1杯を、少なめに見積もって仮に600kcalとすると、それが20杯で12,000kcal。1回の食事でそれです。食事療法では、小柄な女性だったりすると、1日の指示カロリーが1,400kcal(つまり、1回の食事としてはせいぜい500kcal程度)だったりするので、大食い競争の選手たちがいかに人間離れしたカロリーを摂取しているかが推して知れるというものでしょう。なにしろ、ケタが2つも違います。

 ただ、いつも観ていて不思議なのは、選手たちの多くが、どちらかというと痩せていることです。毎回あんな食事をしているわけではないにしても、あれだけのキャパがあるということは、普段も決して質素な食生活ではないのでしょう。それでどうして、あんなに痩せていられるのか。

 一説によると、ああいう人たちはなんらかの消化器異常を持っていることが多いそうです。栄養吸収の効率が悪いため、人よりたくさん食べないと人並みのエネルギーを摂取することができないわけです。真偽のほどはさだかではありませんが、うなずける話ではあります。そうでなければ、彼らはとっくに糖尿病になっているでしょう。

 それでひとつ思い出したのが、パンダのことです。そうです、あの白黒の熊猫のことです。パンダの主食は竹ですが、よく考えるとこれは不思議なことだと思いませんか? あのような愛らしい見かけをしていても、パンダは熊の一種です。熊と言えば普通は肉食なのに、なぜ彼らは竹をワシワシと食べるだけなのでしょうか。

 実は彼らも、もとは肉食だったのだそうです(今でも、小さなげっ歯類や昆虫などは食べることがあるそうですが、食事全体から言うとわずかなパーセンテージに過ぎません)。ただ、不幸にして、彼らが繁殖した地域から獲物の数が激減してしまったため、彼らは環境に適応して、生息地域にたまたまたくさんあった別の物、つまり竹を食べて生きていく道を選んだのです。

 しかし、パンダの消化器は肉食動物仕様のままです。肉は単位量当たりの栄養価がズバ抜けて高いので、短い消化管でも効率的に必要なエネルギーを摂取することができます。しかし竹は、植物の中では栄養価が高い方だとしても、しょせんは植物です。牛のように長い消化管を持ち、反芻して、時間をかけて最後の一滴まで栄養を搾り取れるならいいのですが、パンダにはそれができません。ではどうするか? より多く食べるしかありません。

 パンダが1日に食べる竹の量は、12〜16kgと言われています。人間の子供くらいの重さです。ちょっと、想像を絶する量ですね。そんなに食べなければならないなら、ほとんど1日中食べつづけているような計算になりそうです。事実パンダの1日は、竹をワシワシと食べているか、もしくはゴロゴロと寝ているかのどちらかによって費やされているようです。寝てばかりいるのは、乏しいエネルギーを少しでも温存するためなのだそうです。

 食っちゃ寝、食っちゃ寝の生活。それでいて、糖尿病にもかかりにくい。ある意味、うらやましくなくもないですが、3日くらいパンダをやったら、僕はたぶん、退屈で死にたくってしまうでしょう。

<前のページ

| |

次のページ>


トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://trackback.nifty.com/cs/trackback/ebooks_trackback/1-046

コメント



コメントを書く

コメントフォーム
名前
メールアドレス
URL
内容

このページの先頭にもどる