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#15 天から降ってくる曲

 Hi! エリックです!僕がよくされる質問のひとつに「歌って、どうつくるんですか?」というのがある。
 「どうつくる?」と思いながら本屋さんにいくと、そんな疑問に答えようとしている本が何冊も並んでいる。どのぐらい役に立つかは分からないけど、"How to write a hit song" という類いの本はよく見かけるよね。
 How? いい曲をつくるのは、すごく簡単で、う〜んと難しい。一番大事なのは直感を信用するということかな。例えば、英語教材の音楽の仕事がはいったとする。僕は一番最初の打ち合わせに必ず、小さいテープレコーダー を持っていく。ミーティングの場で、「こうこう、こういう歌をお願いします。」って注文されると、だいたい、何かしらアイディアが湧いてくる。そうしたら、その場ですぐに歌って、録音するのがポイント。初めて仕事をするクライアントだとびっくりさせてしまう場合もある。でも、そんなことは気にせず、最初に飛び出してきたものを土台に、自然で新鮮な歌をつくりだしていく。

 自分のために曲をつくる時も、同じように直感を信用しないとだめ。だけど、インスピレーション が湧いてこなかったらどうする?そういう時は無理をしてでも歌をつくる。つまらないものでもいいから、とにかく何かをつくる。そうして、自分の中にあるクリエイティビティー のパイプの栓をひねり、そこの流れをきれいにする。だいたいこれで、そのうち、いいアイディアが流れ出してくるはず。直感でやってくるのが一行だけでも、その一行のなかに曲全体のイメージやテーマ が入っていることは、意外と多い。

 今回、紹介するJohn Mayerの "No Such Thing"はできたてのように感じる、新鮮な曲だ。メロディーとリズムと歌詞の組みあわせ方があまりにも自然!Johnはこの曲の大半を直感で思い付いたとしか思えない。

 静かなイントロの後で、いきなりJohn が歌い出す:'Welcome to the real world' she said to me condescendingly." 
 この1行にこの曲のテーマがはっきり表れている。キーワードは 'real world' と 'condescendingly'.  アメリカではreal world というと、大抵の場合は「学校じゃない方の世界=実社会」という意味。condescendinglyは、相手に対して、わざとらしいくらい親切に、でも、ちょっと見下したような、「あなたは何も知らないから、教えてあげるわ」という感じの、けっこう嫌な言い方。そんな風に「本当の世界にようこそ」って言われたんだね。その誰か (she) が「学生時代にミュージシャン の真似をするのはいいけど、もう卒業したのだから、もうreal world にいるのだから、ちゃんと何をしたいのか、真面目に考えなさい!」という意味合いをもって、「Welcome!」と言っている。だけど、 John は負けずに自分の本当の気持ちをうたう:


僕の卒業アルバム!

I wanna run through the halls of my high school
I wanna scream at the top of my lungs
I just found out there's no such thing as the real world
Just a lie you've got to rise above

 高校の廊下中を走り回って、「real world なんてないよー!全部、嘘だー!」って思いっきり叫びたいんだ。まー、気持ちはわかるけど、勝手なコメントを言えば、歌詞の内容に対して、「そうだね!そうだよ!」とまでは思えない。それより、僕をうならせるのは、この歌詞がのっているメロディーとリズムのぴったりさ。すごい。叫んで歌っているわけではないのに、裏声になる'top of my lungs' のところでは、叫びたい気持ちがビンビンと伝わってくる。クールなアコースティックgrooveにのった、本気のボーカルを聴くと、これは天からJohnに降ってきた直感から生まれた曲だと感じる。だから、大好き。最近、この曲ばかりうたっている。シャワーを浴びながら、道を歩きながら、電車を待ちながら…。またまたT.E.M!?


TEM*: Transformational Experience through Music (音楽トランス体験)。音楽家がその曲を作った時の気持ちをリスナーが体感・再現する状態。