タイトル: 『天下御免の向こう見ず』
著者: 爆笑問題
価格: 880円(税込 924円)オンライン販売価格
ページ数: 154P
ファイルサイズ: 2,439 Kバイト(Mac) 1,824 Kバイト(Win)

目 次

I   想起……アナムネシア SPECIAL TALK(1)太田光×田中裕二
II  形成……ビルドウンク SPECIAL TALK(2)太田光×田中裕二
III 自我……コギト SPECIAL TALK(3)太田光×田中裕二
IV 狂騒……オリギア SPECIAL TALK(4)太田光×田中裕二
特別対談 其の一 WONDER MEETING 松村邦洋×爆笑問題
特別対談 其の二 WONDER MEETING 岡田斗司夫×爆笑問題
解説 中沢新一  

 爆笑問題を結成して九年。私は今まで、一度も「解散」という言葉を口にした事はないが、相棒の田中は何度もある。
 彼から最初に「解散しよう」と言われたのは、コンビを組んで三カ月目だ。
 当時私達は、月に一回開かれるお笑いライブの素人参加コーナーに毎月出演しながら、プロになるチャンスをうかがっていた。その頃の我々は“漫才”ではなく、“コント”をやっていた。よく漫才とコントの違いが解らない、と言う人がいるが、要するに、センターマイクの前に二人が立って、馬鹿な事を喋り合うのがいわゆる“漫才”で、それぞれが何かの役に扮して、お芝居をするのが“コント”だ。
 その日のコントは、私の中でもかなりの自信作だったが、ただ一つの不安は、ネタの冒頭にある田中の長ゼリフだった。コントは漫才と違い、お芝居だから、最初の状況説明や雰囲気作りを失敗すると、最後まで客を引き込めないまま終わってしまう事になる。漫才なら、一つ失敗しても、すぐ別のネタに話題をフって雰囲気を変えればいいのだが、コントはそうはいかない。そういう意味でも田中の長ゼリフはとても重要だった。本番。田中は、案の定失敗した。緊張して舌が回らなかった上、セリフを忘れてワケの解らない事を喋り続け、全く客をつかめないまま、ネタはドッチラケで終わった。今でもネタがウケなかった後は、かなり落ち込むが、当時のソレは今と比べものにならない。何しろそこしか発表の場がないのだから、そこで失敗したら全て終わりなのだ。私はかなり厳しい事を田中に言ったと思う。すると田中は私の文句を聞き終わった後、決意したような顔でこう言った。
「解った。じゃあ、来月のネタで、もしまた俺がトチったら解散する」
 全く意味が解らなかった。勝手にトチって勝手に解散されちゃたまらない。とにかく私は、
「それは認められない」と言った。
 それから九年続けてきて、一番最近、田中が解散を口にしたのはつい一週間前だ。駅のホームで電車を待っている時、私が暇つぶしに彼にタバコの火を近づけて遊んでいたら、突然、火のついたタバコを素手でひねりつぶし、真顔で「解散だ! もう無理だ!」と叫んだ。簡単に解散を考える奴だ。

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