|
タイトル: | 『ヒレハレ草』 | |
| 著者: | 爆笑問題 | ||
| 価格: | 880円(税込 924円)オンライン販売価格 | ||
| ページ数: | 146P | ||
| ファイルサイズ: | 3,69 Kバイト(Mac) 2,74 Kバイト(Win) | ||
| 目 次 | |
| I | 起 源 アルケー |
| II | 知 識 エスピメーデ |
| III | 理 念 メデー |
| 特別対談 | 其の一〔爆笑問題×佐藤雅彦〕 |
| 特別対談 | 其の二〔爆笑問題×おおひなたごう〕 |
|
私も漫才師になって十年以上が経つ。最近になって、自分でもようやく、ものの道理が解るというか、分別がつくようになってきたとは思うが、デビューしたての頃は、誰よりも生意気で、態度が悪く、大して芸も無いくせに俺が一番だという意識が強く、非常に鼻持ちならない新人だった。その頃の自分を今思うと、何とも恥ずかしい限りである。 どこに行ってもそんな調子だったものだから、よく先輩の芸人さん達から怒鳴られ、説教をされたものである。その中で一つ、忘れられない経験がある。 アレは7〜8年前だろうか。深夜のテレビで2つ3つレギュラーを持ち、ライブでのファンも増え、雑誌などでは『次世代の旗手』などとおだてられ、私はますます調子に乗っていた時期である。 その日は地方の営業だった。確か栃木の何処かだったと思う。駅から1時間近くバスに揺られて着いたのは百人も入れば一杯になるような公民館の中の小さな会場だった。 カラオケ大会の余興。当然客は年寄りばかり。私は朝からふてくされていた。何で自分がそんな所で爺さん婆さん相手にネタをしなければならないのか。しかもカラオケの前座で。 楽屋といっても公民館の中の小さな会議室のような所だった。ドアの張り紙に『人間ポンプ様・爆笑問題様』とある。(……ちっ、楽屋ぐらいべつにしろよ)私はますますふてくされ、ポケットに手を突っ込んだまま楽屋に入った。 部屋の隅に老人が座って、お茶を飲んでいるのは見えたが、私は挨拶もせずに椅子にどっかりと腰をおろし、足を机に投げ出して、早速相方の田中に文句を言い始めた。 「大体こんな田舎のカラオケ大会で、芸人なんか呼ぶんじゃねえっつーの、芸の解る客なんかいやしないんだからよ、なあ!」私のそんな愚痴にも慣れっこになっていた田中は「まあな」とかなんとか適当に相槌をうっていたが、そのうち耐えきれず部屋を出ていった。 私は煙草をくわえ、ふんぞり返って窓の外の空を見ていた。しばらくすると、奥でお茶を飲んでいた老人が口を開いた。「……兄さん、漫才かい?」私は、一応、机の上にあった足を降ろし、でも手はポケットに入れたまま、「ええ」と答えた。「ふ〜ん……芸、芸って言ってるけど、そんなに芸に自信があるのかい……」おそらく私は、面倒くさそうな表情で「へぇ」とか「はぁ」とか言ったと思う。 すると老人は「俺のは、そんなに大した芸じゃねえけど、見せようか……」 人間ポンプといえば、金魚を飲み込んで生きたまま出したり、碁石を飲み込んで白と黒を分けて出したり……。子供の頃テレビで見て凄いと思ったのは憶えているが、こんな楽屋で見せられても仕方ない。 「……いえ、いいです」と私が言いかけると、老人は「滅多に見せねぇんだけどな、これが本当の俺の芸だ」と言い、アゴをカクッと外し、信じられない程大きく口を開けた。 呆気にとられ呆然としていた私は、アッという間に、その口に吸い込まれてしまった。 真っ暗で広い人間ポンプの腹の中。私はなんとか脱出しようと必死でもがいた。しかし、もがけばもがく程、無数の碁石と金魚が私の体に絡みつき身動きがとれなくなった。 しばらくすると、天から、世界中に響くような恐ろしい怒鳴り声が聞こえてきた。 「楽屋に入って来た時はぁぁ! 挨拶ぐらいしろぉぉぉ! 解ったかぁぁぁ!」 私は必死で「わ、解りました! ごめんなさい! ここから出してください!」と泣き叫んだ。次の瞬間私は、元の椅子に座っていた。とても信じられなかったが、握りしめていた両手を開くと、そこにはそれぞれ白と黒の碁石があった。 これは、今まで田中にも言ってない話である。 |
| Windows版を 購入される方は、こちらヘ | Macintosh版を 購入される方は、こちらヘ |
![]() |
特定商取引法に基づく表示個人情報保護ポリシー Copyright (c) NIFTY 2007 All Rights Reserved. |
|