タイトル: 『「怖くて不思議な体験」自慢』
著者: 不思議な世界を語る会
価格: 600円(税込 630円)オンライン販売価格
ページ数: 187P
ファイルサイズ: 418 Kバイト

目 次

はじめに  
乗り物・道路での恐怖体験
建物にひそむ怪しい影
夢・金縛りの怪奇現象
学校で起きた恐怖体験
冥界からのお告げ
山野・水辺に棲みつく怪異
精霊・物の怪どもの怪

 いまから十四年前に、私が体験した不思議なことです。
 当時、私の車で友人と娘を連れて、札幌から小樽まで、深夜ドライブに行きました。途中、銭函(ぜにばこ)を過ぎたあたりで後部座席に乗っていた娘が、「うそー!」と叫びました。
 私たちは、一瞬何が起きたかわからなくて「なんだこいつ」と思っていましたが、その後も娘はブツブツと誰かと話しているようすでした。
 私は運転をしていたので、うしろをよく見ることができなかったのですが、助手席の友人に聞いてみると、後部座席の横の窓の下あたりで誰かと話しているようだというのです。娘はもともと霊感の強いほうで、いままでにいろいろな体験をしてきているので、今回もそれだなと思いました。
 私の車はけっこう古く音もうるさかったので、よく会話が聞こえません。そこで朝里(あさざと)町の、病院のような建物の駐車場に車を止めて、しばらく話を聞くことにしました。
 会話は、娘のいっていることしか聞こえないのですが、
「どこから来たの?」
「ふーん」
「どうやって来たの?」
「名前は?」
「わかんないの?」
「知り合いは?」
「そんなことしたら、死んじゃうじゃない!?」
「どうすればいいの?」
「お金?」
「ほら、似たようなお金、いまでもあるよ」
「ねー、もう帰って」
「舟?」
「舟つくればいいの?」
「舟で帰れるの?」
 という会話のような声が、聞こえてきました。私は「舟か」と思い、車のなかにあったガムの包み紙を舟の形にして娘に手渡しました。娘はすぐに受け取り、
「ほら、舟があるよ」
「この舟をどうしたらいいの?」
「えっ? 海に?」
「海に流せばいいの?」
 私たちは「よし、海だ!」と、車で小樽の港へと向かいました。そこは小樽港のフェリー乗り場で、深夜なので誰もいません。
「海についたぞ」と私がいうと、ダッシュで靴も履かずに外に出て、コンクリートでできた棧橋のぎりぎりのところで、落ちそうになるくらい身を乗り出し、
「これで本当に帰れるの?」
「だいじょうぶ?」
「いい? 舟、落とすよ」
 といって、紙でできた舟を海に落としました。海面までは二メートル弱あり、風も微風ながら吹いていたのですが、舟は風に煽(あお)られることもなく、まっすぐに海に落ちました。娘は自分の目とおなじ高さに目線を置き、「本当にだいじょうぶね?」「ひとりで行けるね」と泣きながら念を押していました。
「それじゃあね、バイバイ」と、娘の目線は、海に浮かべ、もう沈みかけている舟に移り、そして舟から海に、やがて空へと移っていきました。
 しばらくそこに三人無言で立っていましたが、しばらくして私は娘に何があったのか聞いてみました。すると、後部座席でうつらうつらしていると、急に誰かに声をかけられて目を覚ましたそうです。
 そこは、古い田舎の家のようで、畳の部屋に正座して坐っていたそうで、目の前におかっぱ頭の十四歳の女の子がいたのです。

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