
2004年、ワンルームマンションは供給戸数が減少に転じた。1996年以降、インカムゲインによる安定収入と年金代わりの金融商品としての魅力を前面に押し出して、年々供給を増加させていたワンルームマンションが、およそ8年ぶりに前年比減少したこと(1999年に一度前年比ごく僅かに減少している)は、ワンルームを取り巻く環境が変化したことを示唆している。近年、ワンルーム市場について「逆風」といわれる要因がいくつか指摘されていた。一つはJ-REITや私募ファンドがリリースする不動産証券化商品の登場と急速な広がりである。これらは証券として市場流通性に優れ、その点で中古流通マーケットが脆弱であると指摘されているワンルーム市場の弱点を突くかたちで進出してきた感がある。
二つ目はデフレ経済の終焉である。本年3月に発表された地価公示、9月に発表された基準地価ともに、ワンルームなどが多く供給されている都心部の交通至便でかつ商業性の高いエリアでは、地価は横ばいから一部上昇に転じており、基準地価では東京都全体で15年ぶりに住宅地が上昇するなど、公的指標でも地価を巡る動きに大きな変化が見られた。デフレによる地価の下落を逆手にとって価格を維持しながら専有面積を拡大し続け、居住性能の向上と利回りの上昇を同時に獲得してきたワンルームマンションは、その経済的背景を失うこととなった。
三つ目の要因は自治体による規制強化の動きである。2005年に入り新たな規制の動きは起こっていないものの、2004年6月に施行され、ワンルームに一律50万円の税金を課すという豊島区の「狭小住戸集合住宅税条例」(いわゆる「ワンルームマンション課税」)は、ワンルーム供給に一定の歯止めとなったと巷間伝わっている。ペイオフの解禁や今後の団塊世代の退職による退職金など、市場には豊富な資金がある一方で、投資家の目は年々厳しくなってきている。2005年のワンルームマンション市場が、このような厳しい環境下でどのような動きを見せているのか、以下、首都圏、近畿圏を中心に、ワンルームマンション市場の「現在」をレポートする。
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![]() データは全て東京カンテイのデータベースに登録されているものを使用。 【集計対象】 集計対象:専有面積30m2未満の分譲マンション(事務所・店舗用含む) および30m2以上50m2未満のマンション 【価格】 新築は分譲価格を、中古は売り希望価格を、各々算術平均して使用 【対象地域】 首都圏【東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県】 近畿圏【大阪府、兵庫県、京都府、奈良県】 【集計期間】 1990年以降(2005年のデータは全て1〜9月の平均または合計) 賃料データのみ首都圏1994年、近畿圏1997年以降 |
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