第十のアルカナ『隠者』

第十のアルカナ「隠者」は、 これなる元祖が人類史上の偉大なる鼻祖「ヘルメストリスメギストス(※1)」として知られるカード。

ウェイト版「隠者」

脚注 ※1)トリスメギストゥス(Trisdmegistus)----------------- 三重に偉大であること、哲学者修道僧、王としての三位一体への言及であり、 最大にして三倍のヘルメスを意味することばで、 使用されるようになったのは、二世紀頃。それ以前はギリシア語のmegas(偉大を意味する)が、 この人格を指す時、三度繰り返し唱えられたと言われている。

「ヘルメス文書」(※2)を残したと言われる修行者、伝説のヘルメストリスメギストス、 はたまた「名状し難い神の異相」であるとも語られるこのカード。


「シエナ(1488)の大聖堂のヘルメストリスメギストスのポートレイト」

脚注※2)----------------- 「ヘルメス文書集成」とは、A.D.100〜300に編纂された様々な内容の文献を集めたものであり、 グノーシス主義的な諸集団の中で修正を加えられている。

よく言われる「ヘルメス主義」とは、ヘレニズム時代の文化的環境から影響を受けた占星術、魔術、 錬金術に関する知識を指し示す「ラベル」であって、 本来のヘルメス主義にあたるのは、ただ『ポインマンドレース』の宇宙創世論だけである。 紀元後、最初の数世紀の間に、ヘルメス主義の集団が存在していたかどうかは疑わしい。 (「エリアーデ世界宗教事典」ミルチャ・エリアーデ著/奥山倫明訳、せりか書房より)

まあ、自称 魔術師・オカルティストという人々は、 修正を加えられていない部分には興味ないかと思われますが。。。

さて、古代エジプトに遡りますと、知恵の神といえば、 こちら「トートの書」を記したと言われます、トキの頭を有した神として描かれる「書記神トート」。


「Hermes of Egypt」

A.D.2、3世紀、この強力なエジプト神がギリシアに入って、 ギリシア人が知恵の神と崇めた「ヘルメス」と同一視され、古今東西にその知恵物語が 語り継がれてゆきまする。

15世紀頃には、キリスト教をはじめその異端的教義、神秘的哲学的思想、ルネッサンス神秘学、錬金術、 占星学、儀式魔術、オカルトサイエンス等など、あらゆる西洋思想に「ヘルメストリスメギストス」の 思想体系が染み込むようになってまいります。
しかしながら、いつの世でも熱狂的な支持を受けるものは相対する批判と弾圧を呼ぶもの。。。
これぞ真理と崇める者と、オカルト主義的異端であると否定する者とに二分されるよう。。。


「太陽と月、極性を結合するヘルメストリスメギストスと創造の炎」

さて、ウェイト版の作者、アーサー・エドワード・ウェイト博士によれば、 著書「タロット図解(The Pictrial Key to the Tarot)」におきまして、 このカードを「ひとつのゴールに到達すること、そこに至るまでの導き」であると述べております。


★「隠者」の導きとは?

「隠者」は第一のアルカナ「愚者」の導き手なのです。

「隠者」と「愚者」、この2枚からは、タイトルどおりの両価性をも見てとることができます。 絵柄の構図、色彩などすべてが対照的に描かれているのがおわかりでしょう。 愚者が向かう先には隠者あり。愚者のたたずむ崖っぷちの下に、意外と隠者がいたりなんかして。。。


ウェイト版「愚者」

太陽の出ていない闇の中、地味なマントを羽織った老人らしき人物は、ランタンの明かりをたよりに、 かつて自分が足を踏み外しそうになった崖っぷちにたたずみ、 深遠なる淵の底を覗き見ているのかもしれません。

今や、地にしっかり足をつけた隠者。
彼は悟りに至りました。何を求め、それがどこにあって、どうすれば手に入るのかを悟りました。 もはや、かつての愚者のように、向こう見ずな冒険に出る必要はないのです。

宇宙の真理を彼は捕らえました。即ち宇宙の法則を会得したのです。 宇宙に関するあらゆる質問への答えは、彼の中に内在しているということを。

完成したひとつのミクロコスモスと、それが漂う大宇宙(マクロコスモス)との因果関係を達観する彼。 もう何も口にすることはありません。 彼が手にした事柄、それは言葉によって言い表すことができるような代物ではないのです。

灰色のマント、それは隠者の悟りの証。もはや虚勢を張る必要はありません。 華美な装束をまとって、我を見よと我に従えと大口を叩く者ほど、隠者の悟りとは無縁なのでしょう。

知恵ある人を表すカードは、これまでにも出てきましたが、この隠者が表す知恵は、 神秘・隠秘学的な知識と経験に根ざした内的・精神的な高まり、深淵なる知恵。

隠者は、ランタンの中に「輝く六芒星を灯すことが出来る人間」なのです。 「恋人たち」の章でふれた、対立原理の調和のシンボル・六芒星は、 この世における人間の可能性の果て、最も完成度の高い、私たちができる物事を表します。 内在する力は、無言でたたずみ、「光」を灯せることで証明すればよいのだから。

このカードは「宇宙の真理」の象徴です。 短絡的な言葉では決して述べることのできない、奥深い事柄を物語っています。 パターン化した解釈はもはや通じません。深い意味を読みとって下さい。

(著作権法に基づき掲載文書の無断転用・流用はお控えください。)


アルカナ第十のアルカナ
タイトル「隠者」
英語The Hermit
フランス語L'Eremita
イタリア語L'Hermite
カードの象意思慮、俗世を離れた事象
精神の深淵な部分から沸き上がる知恵
キーワード 高尚な精神
経験に根ざした援助・助言
内省
沈黙、瞑想、孤独な状態
秘め事・秘密にする
用意周到・入念な計画
単独行動

頑迷・偏屈
神経質・ネガティブ
過剰な心配・邪推
閉鎖的、陰湿
秘密がばれる
浅はかな行い・考え
(上記の事柄に対する)警戒・警告