第十一のアルカナ『運命の輪』

22のアルカナ論も中盤に入り、ターニングポイントを迎えます。 今回のアルカナ「運命の輪」は、まさしく人生の転機を象徴するカード。

前回の「隠者」は、ひとつの到達地点における「悟り」を示すカードでした。 物語の筋としては、ここから更なる物語の展開が予想される所。

このカードは、ひとつの周期、物事の終わりと始まり、時の流れを物語るもの。 好転、暗転、流転、あらゆる変化の象徴です。

万物は流転します。人もモノも動物も、命ある物もなき物も、この宇宙も全て。 「今」というこの一点は一瞬のことであり、次の瞬間にはもう姿・形が 変わった異質の点と化しているのです。 変容し続ける私達ですが、そこに輪が回転する時の一定の規則性とルールがあります。


★「輪」の神秘性

数字のゼロを形作るのにもふさわしい「輪」。

切れ目のない所から、「永遠」という象徴概念がここには存在します。 私はアルファでありオメガであると語ったキリスト。 自分の尾をくわえるウロボロスの蛇の図像も有名です。


「ウロボロスの蛇」

物事にはサイクルがあり、 始まりと終わりとが常に背中合わせであることが、ここには物語られています。

「運命の輪」が回転することによって、ひとつの物事の終わりと始まりを体験するわけですが、 これは「偶然発生」すること。 人は誰も自分の「運命」を操作することなどできないのです。 私達がどこから来て、どこへ行くのか、どうしてここに居るのか・・・? 「神のみぞ知る」こととして称されるのにふさわしい私達の「運命」です。 根拠なく降りかかり、そこに人の意志など介在する余地はないのです。

このアルカナに振り当てられているローマ数字は「]」、 10が振り当てられています。
これもまた、ゼロ、輪を形作る「円」で表され、 完全なる調和、完全性のシンボルとされています。

数秘的な解釈をすれば、 創造の原点である1、 二元論を象徴する2、 それを解決する安定と調和の3、 物質界を象徴する4、 1+2+3+4で表される10は、まさしく「神」を象徴する数字です。

ウェイト版の運命の輪をご覧になって頂きましょう。


ウェイト版「運命の輪」

天空に浮かぶ「運命の輪」が回転する様が描かれておりますが、 絵柄の四隅には、四種の生き物が描かれているのが分かります。

翼を有した人、鷲、獅子、牡牛が、 それぞれ「水」「風」「火」「土」という四大を司る守護天使として描かれています。

また、運命の輪の外輪には、ROTA、 「輪」を意味するラテン語が記され、各文字の間には、 4文字のヘブライ文字が置かれています。
「ヨッド、ヘー、ヴァウ、ヘー」と読みますが、 「名状しがたき神の名」を示すことばです。

「タロットと神、宗教に何の関連があるでしょう?」と、 ある人は言うでしょう。

しかしながら、ウェイト版の「運命の輪」には、 明らかに、私達を取り巻く不可視なるエネルギー、 時の流れと共に生まれては消え、消えては生まれる人や 生き物、あらゆる存在物の歴史を見守ってきた神の存在が描かれているのです。

抗し難い宇宙のサイクルを象徴する「運命の輪」、 時間的・環境的な変化として表れ、 解釈の際には、質問者には因果関係がないというのが定説です。

時流は根拠なく、あなたを巻き込みます。
誰しもが下降し上昇する、その繰り返しが「人生」であり、大宇宙の法則なのです。 善人にも悪人にも分け隔てなく降りかかる、時の流れによってもたらされる変化、 たとえば自然災害などを表すこともあるでしょう。


「アルカナ論」最終項となる22番目の「世界」のカードをご覧下さい。


ウェイト版「世界」

カードの四隅には、やはり人、鷲、獅子、牡牛が描かれており、 メビウスの輪のようなリースの中で、女神がダンスを舞う姿が見られます。
この女神の舞いは、「運命の輪」が浮かぶ天空よりさらに上の天上界にて、開催されているのです。

22枚の大アルカナの中で最も美しく描かれる「世界」の原型がここにあるのですが、 「運命の輪」にも、相通じる諸力が働いております。
四大のエネルギーと神の意志、私達の望みが調和し重なった時、 世にも美しい「奇蹟」という出来事が発生することでしょう。


★運命を紐解くカギは四種の生き物!

「運命の輪」−そのようなわけで、時にチャンスや幸運をも表しますが、 基本的には「時の流れと変化するもの」と解釈されるのが一般的です。 転々と変わっていくことを暗示するので、その状況は一時的なものと言えます。

質問者の本質的な幸不幸や能力を示しているのではありません。 また幸不幸という言葉も、そのカードが出た時点でのみ、ふさわしい事柄であって、 永続的なことではないのです。

環境が味方してくれていること、タイミングの一致、好機、今まさにチャンスであること、 という解釈になってきます。未来に出た場合、好転するのか、チャンスが到来するのか、 またその内容が何なのか、その周囲のカードを絡めて判断してゆきます。 いずれにしも、あなたに事態を左右する力があるのではなく、 時流の波に乗せられ変化してゆく一過程が物語られているのです。

執着心を捨て、時の流れに身を任せること、
今の思いは一時的に棚上げにして、相手や周囲が変化するのを待つのが良いのです。

逆位置では、暗転すること、環境に恵まれず物事がスムーズに進まないことを示します。 また、急な発熱や突発的なケガなど、アクシデントを暗示して出ることがあります。

あらゆる事象は、万物を構成する四要素すべてが相まって起こること、 その相互関係のバランスが崩れた時に、悪しき変化は訪れることが分かります。

先にも述べましたが、人間の精神構造に当てはめた場合、四要素はそれぞれ、 直観、感情、思考、物質的感覚あるいは肉体に相当します。

未来に暗転の象徴として出た場合は、質問者に警告を与えて下さい。 内的な四大のバランスを図ることの重要性があることを伝えて下さい。 激しく人を非難する感情、恨みつらみの感情、快楽や肉欲に支配されるなら、 たとえどんなに現状が満ち足りていようと、陰りが訪れる時が来ることでしょう。

絵柄の四獣の概念は、旧約聖書以前に、魔術・神秘的な分野で頻繁に登場しています。 古代エジプトにおいては、ホルスの4人の息子たちが、各々サルの頭、ジャッカルの頭、 ハヤブサの頭、人間の頭を持ち、それぞれ北、東、西、南の基本四方位を司っていました。

「ホルスの4人の息子たち」

また、Tetramorph テトラモルフと呼ばれる、ギリシア語からきた「四重のかたちの」を 意味するものがあります。 ライオンは人間の感覚的要素、牡牛は肉体的要素、鷲は高度な精神を表し、翼を持った人は、 これら三つの能力が人間をかたどって表現されたものだと言われています。

古代エジプトの王朝の支配下にあったユダヤ人ですが、 指導者モーゼが中心となり脱出した後には、ユダヤ教を成立させてエジプトの文明や 技術を取り入れました。
「運命の輪」の中の羽を有した生き物たちが手にしている読み物は、 離散して各地に散らばってしまったユダヤ人たちが、 それぞれの場所でユダヤ人としての誇りに支えられながら学び、 生活の知恵としてきた「律法の書」に違いないでしょう―。

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アルカナ第十一のアルカナ
タイトル「運命の輪」
英語Weel of fortune
フランス語Routa de Fortune
イタリア語Routa della Fortune
カードの象意思宇宙の法則、時の流れがもたらす変化
サイクルの終わりと始まり
キーワード あらゆるチャンス
成功・達成・獲得
幸運な時
好転・チャンス到来
変化
結果が出る
思いがけない出来事
必然性
可能性はある時
一時的な見込み

急変、避けられない出来事
抵抗できない状態
流される
暗転、停滞
失敗する