第十七のアルカナ『塔』

ウェイト版をはじめ現在出回っている多くのデッキは、旧約聖書の「バベルの塔」のエピソードを連想させる絵柄が多いようです。 旧約聖書の「バベルの塔」のエピソードをご存知でしょうか。そこでは塔が、神と同等になりたいと企んだ人間の尊大さ、そして誤った意識の持ち方に対する神の懲罰として語られています。「破算する」「事故に遭う」というような解釈ばかりではなく、個人の知性、能力の限界、奢り高ぶった意識の崩壊を暗示しても出るでしょう。この地上では、神以外の者が家を建てる・・・自分を神であると名乗った教祖たちがいったいどれだけ没落していったことか、その超常的な力を誇り売り物にしてきた人物の末路が彷彿とされます。
ヴィスコンティ版キャリー・イエール・パックの「塔」
ヴィスコンティ版キャリー・イエール・パックの「塔」

そびえ立つ石造りの灰色の塔は、「悪魔」の台座、「皇帝」の玉座と同様に、モノ、物質、物質主義的な人の意識の象徴です。

「法王」
「法王」

「正義」
「正義」

「法王」「正義」においても、灰色の石造りの支柱は「俗世間」を象徴するもの。ここに描かれているのは、聖域は聖域でも、人間社会の中の聖域であって、決して天界ではありません。皆人間、俗物の備えている人並みの事柄を解釈すべきでしょう。

その意識が砕け散る様が、物質主義の崩壊を示すのが「塔」というアルカナ。
堅く凝り固まった人の精神性、利害や物欲に囚われがんじがらめになった人間その物の徴でもあり、これを打開し新たな発想を獲得する時にもこの札は登場してきます。発見や閃きがあること、自ら殻を破り、過去の蓄積によって築き上げられた自分自身の崩壊を象徴的に表している札でもあるのです。精神面の拡大や解放、意識改革をも表します。有無を言わさず状況がガラリと変わること、それによって自分自身も変化を余儀なくされるでしょう。

メンタル、精神、スピリチュアリティという人間の内面に対して、ボディ、肉体の象徴が、灰色の石によって表されることもあります。即ち、大ケガをしたり身体的なダメージを得るようなことでもこの札は出ます。事故や災害、人との絶縁、破算などを暗示して出る場合もあり、まさにショッキングな人生の大転機を象徴するものです。窮地に陥ったり、変化や象徴として、忌み嫌われることが多い札です。しかし、物事が朽ち壊れ果ててゆくことに前向きな解釈ができることもあります。壊れた後に残された再建という作業の中で、以前にあった塔よりもさらに優れたより良いものを構築できる可能性が生まれるのですから。

ウェイト版「塔」の背景が真っ黒な上に、天から落ちてくる稲光が黄色に染められ、視覚的に強烈な印象があるのが特徴です。

ウェイト版「塔」
ウェイト版「塔」

塔を打ち砕く落雷は、地上の誰の頭上にも、突如として身に降りかかってくる自然現象。必ずしも、当事者に非があるとは限りません。破壊、崩壊とは受け入れ難い出来事でしょうが、こうなった時には無駄な抵抗などしないこと。雨も風も雷も、ひとつの自然のサイクルであって、「悪しき事柄」だという概念は、快適な生活を望む人間のご都合主義的な受けとめ方で、地上の万物にとってこの落雷に善悪の概念などまったく当てはまりません。

何事にも壊れて然りという時があるものです。壊れること、そこに某かの意味があるはずです。それを受け入れ再建することにエネルギーを注ぐごとが最も重要であると言えるでしょう。このカードは不吉な凶札ではないのです。

逆位置になると破壊の跡、荒廃状態に焦点が当たります。突発性、衝撃の度合いは薄れるでしょう。しかし、事態は混沌とし、目の前の道はがれきの山に塞がれ立ち往生している状態に心が出されることには変わりありません。心身共々生活も大荒れに荒れる可能性がありますが、雷雨も永遠には続きません。暗黒が引き晴れ空が見えるまで、一歩一歩再建に努めることでしょう。


アルカナ第17枚目のアルカナ
タイトル「塔」
英語The Tower
フランス語Le Maison Diev
イタリア語Ia Torre
カードの象意 崩壊、衝撃的な出来事
事態の急変
キーワード 突破的な出来事
衝撃的な出来事
ハプニング、トラブル
ショックな出来事
心に傷を受ける
考え方・方針が変わる
事故・火傷・発熱、体調の悪化
破産・倒産
手術、火傷

嵐の後の混乱
混沌とした状態
問題山積
雨降って地固まる
立ち直りの過程
破壊は免れる