第五のアルカナ『皇帝』

〜皇帝とヘレニズム文化〜

アルカナ論 第五弾は「皇帝」。
今回は「皇帝」にちなんで、「タロットカードの起源説」に関する謎解きを少し。
さてまず、歴史上、皇帝と言ったら誰を思い浮かべるだろう?

紀元前3世紀、「アレクサンドロス大王」、アレキサンダー大王とも呼ばれるが、 この人は比類の「大帝」に違いない。ギリシアを圧制する父親を暗殺して即位し、 全ギリシアを率いてかの有名な東方遠征を果たします。
ペルシアを滅ぼし、中央アジアからインド西境、事実上の全西アジアを征服。 最終的にはギリシア、エジプト、アラビアにまたがる大帝国を築いています。

エジプトにはアレクサンドリアなる首都が創立され、
ここがヘレニズム世界の中心地となる。

★キーワードは「ヘレニズム文化」

ドイツ人史家の造語で「ギリシア風文化」とのことだが、 地中海東海岸の港市を中心に西アジア一体に形成された「東西融合の文化」の総称です。

ここに、タロットカードの起源説に関するカギが!

エジプト人の神託・魔術的世界観、ユダヤの戒律、宗教、 ナイル、チグリス・ユーフラテス流域発祥の占星学、 ギリシアの哲学、数学、神学、そういったものの融合が、 ごった煮状態で見受けられるのが今日のタロットカードなのだが、 それがもともとの「アルカナ」なのだと、早合点されてしまうのは恐ろしいことだ。

お分かりでしょう、起源を探究するときのポイントが。
美術館に保存されているいわゆる「最古のタロット」に関して 云々するよりも、もっと大きな歴史・文化・思想の流れに注目することです。

ペルシアとは、イラン高原を中心とする地域にまたがる名称ですが、 国家名として、アケメネス朝、ササン朝、イラン王国の旧称の3国があります。
ことにアケメネス朝ペルシアにおける「ヘレニズム文化」とは、 タロット史家にとって魅力あるものとされています。

ヘレニズム時代としては、紀元前30年、エジプトの滅亡で終わるが、 文化面ではヘブライズムと対立する概念として、ともにヨーロッパ文化の2大基調となります。


★最古のタロットとは?

最古のタロットはルネッサンス期・15世紀にイタリアで発祥、 という口伝えは一般的になってしまったが、「現存」しているタロットで最古のものは、 1400年代にイタリアはヴィスコンティ・スフォルツア家・公爵のために描かれた ヴィスコンティ版である、という点を間違えないで頂きたい。

その時点で既に、一連の体系が整然としているこの78枚のカードが、 もともとどこでどう発祥したのか、 そういう観点からは、最古のタロットカードの存在とは未だヴェールに包まれているのです。


〜皇帝の鎧(よろい)と台座、その「権力」とは?〜

前出の手描きのヴィスコンティ版ではなく、 木版画のマルセイユ版が、通説的にはタロットの基本とされ、 大元のデザインに近いものだと認識されている。
これも、タロットカードの起源にまつわる謎のひとつではあるが。。。

多くのデッキがマルセイユ版に倣い、「皇帝」は髭を生やし、 台座に腰を掛けて横向きで描かれている。

マルセイユ版「皇帝」

片足にもう片方の足をかけているのが常。
足を組んで木星の惑星記号を形作っていると解釈される時は、木星を司る最高神ジュピターとして。

また、その足で十字を象っていると解釈される時には、 物質界(=十字の象徴)の権威者と化すこの人物です。

ヴィスコンティ版を踏襲している「メディーバル・スカピーニ」タロットでは、 台座と赤い鎧、カタジロワシ(king eagle)の紋章、手にしている杓杖により、 王侯貴族の「権威」が強調されている。

「メディーバル・スカピーニ」タロット

いずれにしても「絶対的権威」の象徴。

バビロン時代は、帝国の守護神は木星を司るマルドウクは、 太陽や月の守護神よりも力ある存在として尊ばれていました。

一方、火星を司るネルガルは、稲妻と疫病で都市を一瞬にして破滅させる恐怖の神。

ウェイト版では、木星を司る絶対神ゼウスの象徴が、皇帝の玉座の羊の装飾品に見られる。
そして、このカードに行動12宮の白羊宮(牡羊座の宮)を 配当させているが、白羊宮を司るのは占星学上「火星」。

「塔」

ウェイトはその火星を「塔」のカードに相当させている。
4番の「皇帝」の諸力が描かれているのが17番の「塔」というわけだ。
ウェイト版13番の「死神」にも見ることができる塔。
シンボリズム的には、塔は男根を表します。

冒頭のアレクサンドロス大帝は、まさに「殺戮の皇帝」・・おだやかでない、カードなのです。

参考文献:世界の大秘術講話/自由国民社、世界史用語集/山川出版社


アルカナ第五のアルカナ
タイトル「皇帝」
英語The Emperor
フランス語L Empereur
イタリア語L Imperatore
カードの象意男性原理、男性的な力、創造・獲得意欲
物事を達成・確立させる
動きを伴った建設的な力
キーワード 支配する、統率力
主導権を握る、争う、闘争
世俗的な権力
昇格、地位の獲得・安定
建設的な力
行動力、前進する
勇気、不屈の精神・信念
実力・行動力不足、無気力
わがまま、無茶、ワンマン
横暴、強引
衝動的
恐れを知らない
未熟・弱さ
権威への隷属