
東条ゆかり SMメス調教
目 次
残酷! 女産業スパイ責め
淫虐の生贄
胡蝶の淫舞
(C)Yukari Tojyo
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残酷! 女産業スパイ責め
プロローグ
私がこれから記そうとしておりますのは、私自身、三か月程前までは全く夢にも思わなかったことでございます。編集部の方々がこれをお読みになっても、果たして信じていただけますかどうですか……。この記録を貴誌編集部にお送りし、公開することが正しいことなのかどうか……、やはり夫と私だけの記憶にとどめておくべきではないか、と今でも私の心は二つに分かれております。けれど、これを活字にしていただくことにより、私共夫婦が体験しましためくるめくようなSMの極致の興奮を皆様にも共有していただきたいと考えたのでございます。
申し遅れましたが、私、東条ゆかり、今年二十八歳の誕生日を迎えました。もちろん、本名は勘弁していただきとうございます。夫の哲男は四十五歳、再婚でございます。先妻は、若くして心臓発作で亡くなったということでしたが、結婚後しばらくしてから、実は夫妻SMプレイで失敗し、悶絶死したのだと知らされた時は驚きました。とにかくそれに懲りたのでしょうか、私に対しては軽いSMプレイを強いる程度で、夫婦生活は人並みといったところです。
さて、夫は某私大の理工学部電子工学科を出て、大手の家電メーカーの大阪支社に就職しましたが、自分の好きなことができないと二年ほどで会社をとび出し、色々な職を転々としていました。今から五年ほど前、大学時代の先輩の田崎さんという方とパーソナル・コンピューター関係のソフト会社を作りました。お陰様で、今でこそ、北九州のF市の中央に、小さいながらも地上三階地下一階のビルをもち、ソフト部門だけでなく、産業用ロボット部門にも進出するほどに急成長をとげましたが、私との結婚当初は、広島の安アパートを二世帯分借りて、片方を会社に、もう一つを「わが家」としていたのです。
私はと申しますと、四人姉妹の末っ子として、熊本の片田舎で育てられ、女子高卒業後就職のため出てきた広島で夫と出会うまで、男性というものを全く知りませんでした。私の勤めておりました美容院は、それこそ「男子禁制」の職場で、店の隣の女子寮も、これまた店長さんの目が厳しく、男っ気などあろうはずもございません。たまたま、新しいもの好きの店長さんが、「パーソナル・コンピューターによる美容相談」というのをお店に入れることになり、その時、哲男さん、つまり今の夫がやって来て、知り合ったというわけです。
新婚旅行――とはいっても、四国一周、三泊四日のつつましいものでしたが――の間中、何とかいうコンピューターのプログラムの作成に頭が一杯だという夫は、私の体に指一本触れずに、数字と英語の並んだむずかしい本と首っ引きで、ノートに何やら細かい式や計算を書き込んでばかりいました。
夫にとってこれは再婚なのだから仕方がないと、私は自らに言いきかせて、観光バスの窓外をぼんやりと眺めていたのでございます。
新婚旅行から帰って三日後、夫は、「できたぞ、おい。これで五十万はかたい!」と、実に晴れやかな顔で帰宅しました。でも、まっすぐ隣の「会社」からではなく、先輩の田崎さんとどこかで一杯飲んできたらしいことは、アルコールの臭いの息からすぐにわかりました。プログラムの完成祝に町へ繰り出したとのことでした。紅らんだ顔の夫は、ぶ厚い書類入れをどさりとテーブルに投げ出すと、いきなり、
「おい、今晩可愛がってやるよ。」
と言い出したのです。その晩でした、生まれて初めてビニ本というものを見せられたのは。私が髪を洗っている間に先にお風呂から上がった夫はタオルケットにくるまり、腹這いになっていました。私がバスタオルに身を包んで出てくると、枕元に持ってきた茶色の書類入れから、何やらバリバリと音のするものを二、三点取り出したのです。
「ゆかり、早く来いよ。面白いものを見せてやるよ」
後で知ったのですが、それはSM専門のビニ本というものだったのです。いたいけな女子高生姿のモデルが後手に縛られ鞭打たれているもの、洗濯挾みで女の一番大切な所を挾まれているもの、など、どれも当時の私にとっては正視に耐えない写真ばかりでした。けれど夫は、そうした写真集の頁を繰りながら、写真と私の表情の変化とを見比べては、ひそかに楽しんでいるようでした。その晩の夫は確かに奮い立っていました。私も燃えました。夫はプログラムの完成からくる充足感と、それがもたらす経済的見通しによる安心感に酔っていたのかもしれません。でも私は、数分前に見せつけられたSMの光景に、体の芯から湧き起こる言い知れぬ興奮をどうしようもできなかったのです。「Sの目覚め」とか、「Mの目覚め」とかいう言葉を知ったのはそれから間もなくのことでした。そして、その夜の開花が、何年か後、今から三か月程前になって、完全な結実をみることになろうとは想像さえしていなかったのです。
謎のビデオテープ
「今晩十時からNHKで、エレクトロニクス産業の特集番組があるから、録画しておいてくれ。テープはテープ・ラックの一番上の右端のを使えばいいはずだが、間違って録画済みのを消去されると困るから、必ず試しに再生して生テープかどうか確かめてからセットしてくれ」
夫からのこんな電話が、そろそろ眠ろうかとベッドの端に腰かけ女性週刊誌をめくっていた私にかかってきたのは今年の六月十八日の夜九時半を回った頃でした。その日、夫は東京でコンピューター関係の展示会があるとかで出張中でした。夫は、「自分は経営よりは製品開発に向いているから」と、本来なら副社長か、少なくとも重役のポストについていてもおかしくはないのに、社長の田崎さんに特に願い出て、開発部部長として現場で指揮をとっているのです。
研究熱心な夫は、会社の方が中堅のコンピューター関係の総合会社にまで発展し、私的にも三百坪の土地に、自分でこう申すのもなんですが、立派な邸宅を構えるようになった今でも、コンピューター関係の情報はマスコミに流れるものまでも、細大漏らさず集め続けているのです。
枕元の目覚まし時計がほどなく十時を知らせましたので、私は慌てて隣の夫の書斎に飛び込みました。会社のホスト・コンピューターとオン・ラインで結ばれた端末機の置かれた夫の机の右の方に、二台のビデオ・デッキが据えられ、脇にテープのラックがあります。そこには、「第三の波」とか「OAは今後の日本をどう変えるか」などとラベルの貼られたテープが整然と並んでいます。一番上には未使用のテープが二ダースほど常備されているのです。出張先からの電話でビデオ録画するのは今度が初めてというわけではないので、私はいつものようにそのうちの一本を適当に取り出そうと指をのばしましたが、「一番上の右端の」というその晩に限っての夫の奇妙な指定を思い出し、言われた通りのを取りました。録画済みを間違って消すと夫に叱られますので、一応念のため、片方のビデオ・デッキにそのテープをセットし再生ボタンを押しました。いきなり、
「もうたくさん。やめて! 許して!」
という女の悲鳴が、スピーカーから飛び出しました。画面が出るより先に、全く出し抜けに起こったことですので、何のことかわかりませんでしたが、とっさに私はボリュームを下げました。防音にうるさい夫の注文で壁には防音材、窓は二重窓にぶ厚い二重カーテン付きというこの書斎は、たとえディスコ並みのボリュームでも、決して音が外へ洩れることはないのですが、私は反射的にボリュームのつまみを左へ回していたのです。一呼吸する間にすーっと画面が明るくなりました。そこに私が見たものは……。
産婦人科の診察室にある検診台のようなものに足首を括り付けられ、太腿をこれ以上開けないといったくらい大きく開かせられた女の下半身だったのです。カメラは、その斜め上方から見下す位置にあるようです。でも、私がもっとも驚いたのは、カメラに背を向けて仁王立ちになっている男の後ろ姿が正しく夫のものであること、そして、のけぞった女の顔が、よくはわかりませんが、どうやら夫の秘書の長谷川さんのようだということです。
私は自分の耳目が信じられませんでした。先程、驚きのあまりボリュームを下げ過ぎたため、画面は無言劇のようになってしまいました。革ベルトのようなものでしっかりと足首を拘束された女は、その時ほとんど動きを止めていました。夫も何か言っているのかもしれませんが、後ろ姿は微動だにしません。
SMの静止画には、夫がよく見せてくれるビニ本で慣れていた私は、思わず生唾を飲み込むと、テープをいったん停止し、巻き戻しをかけました。改めて最初から見てみたかったのです。恐いもの見たさというのでしょうか、SとMの両方の性癖の開発を夫から受けていた私は、胸の動きを抑えることができませんでした。
まず私は、もう一台のビデオ・デッキに、セロファンの封を切っていない、間違いなく未使用のテープをセットすると、夫に言われた通りの放送局と時間にタイマーを合わせました。私は謎のテープを何にもわずらわされることなく、じっくりと見たかったのです。夫の写っているテープの巻き戻しが完了すると、私は興奮で小刻みに震える指先ももどかしく、再生ボタンを押しました。今度はボリュームをちょうどいいくらいにしておきました。
以下に記しますのは、そのテープに入っていた、信じられないような内容の全てでございます。
最初、画面は真っ暗で何も写っていないようでした。ただ、録音だけはされているようで、こんな科白がスピーカーから響いてきました。やはり、声の主は夫でした。声の反響の具合から、かなり広いコンクリート壁か何かの部屋のように感じられます。
「やはり、そうか。前からおかしいと思っていた。うちの社で開発したソフトや器材が、発表の一か月ぐらい前に、必ずT社から出し抜かれてしまう。産業スパイ専門の私立探偵社に依頼して、半年程度前から情報を収集していたが……。長谷川君、君だったのだね。しかも、君の流した機密情報の御蔭で、君の彼氏――そう、君と前川君は先月婚約したそうだね、探偵社からのレポートにそうあったよ――その前川君はT社で異例の抜擢、今じゃ新製品開発室長の座におさまっているそうじゃないか、あの若さでね。」
夫の、奇妙にも、柔かな声だけがスピーカーから流れ続けます。
「前川君への御礼は、近いうち、じっくりさせてもらうことにして……。だが、探偵社にもわからないのが、どうやって君が社の機密を持ち出したのか、というその手段なのだ。コピーなんて、あんなかさばるものが、そうやすやすと持ち出せないのはわかっている。磁気テープ、フロッピー・ディスクについての持ち出しは、退社時に毎日全社員に対して行なっている所持品検査でチェックできるはずだが、君はそれもパスしている。すると、残るのは、情報を極小にしておく手だが、その方法と搬出方法を知っておくことは、今後の機密保守のため、ひいてはわが社の将来のために是非とも必要なことだ。そこで、これから、君にそのことについて詳しく尋ねようというわけだ。」
そう言い終ると同時にそれまで何も写っていなかった画面上方から二筋の青白いスポットライトがすーっと流れ、スクリーンの中央で交叉しました。その交叉したところに、スチール製の事務椅子に括りつけられた、夫の秘書長谷川由紀子の姿が浮かび上がったのでございます。
長谷川さんは、二年程前、爆発的急成長を遂げていた夫の会社に入社、その専門知識と何よりも抜きん出た美貌を買われて、部長秘書の座におさまったのでした。会社関係の人は滅多に自宅に連れてくることのない夫ですが、長谷川さんだけは別格で、しばしば夕食などに招待し、私も夫の大切な秘書の方なのだからとお遇しなどして、接待に努めてはいましたが、目鼻立ちがきりっと引き締まったいわゆる男好きのする美人で、そのはじけるような均斉のとれた肉体美に、どちらかというと筋肉質で骨格が目立つ私は、心ならずも秘かに嫉妬を覚えていたのでした。
その長谷川さんが、シックな紺のブレザーにプリーツの白スカート、銀色の刺繍入りのストッキングに編み目の白ハイヒールという清楚な秘書の服装そのままに、スチール・パイプ製の事務椅子に後ろ手に縛られ、うなだれているのです。白いビニールのロープが、豊かなバストの上と下とを、絞るように縛り上げ、ウエストにも同じロープが、それでなくても引き締まった腰周りをさらに細く見せるようにかけられています。
もう一か所、すらりと長く伸びた下肢がぎゅっとくびれ、キュッと締まった可愛いい足首にも、両足をきちっとそろえる形でロープがかけられています。その哀れな姿以外には、ライトの中には何も見えません。夫の声だけが、急に冷たく厳しい調子で響きました。
「念のため断っておくが、これから君に対して行われる全ての処置は、三台のビデオ・カメラによって自動的に記録・編集される。今後二度と今回のような不祥事が起こることのないよう君の後任の秘書達への見せしめのため保存しておくのだ。それからもう一つ、このビデオ・テープには君にとって、最高の喜びとなるはずの目的がある。すなわち、これから君が見せてくれる華麗な光景の全てを君の婚約者前川君にも楽しんでもらうため、マスター・テープから複製して前川君の元に送り届けるのだ」
この言葉に、それまでうなだれていた女ははっと頭をもたげ、息を飲みました。端正な面立ちには言いしれぬ恐怖の色が浮かんでいます。
「止めて下さい。そ、そんな、ひどい。前川さんには何の罪もありません。部長さんが、これから私にどんなひどいことをしようというのか知りませんが、秘書としての失態を辱められている姿を健次さんにだけには見られたくありません。健次さんに会わす顔がありません。私にできるどんな償いでもいたしますから……」
その言葉が終るか終らないうちに夫の声がかぶさります。
「どうやら君は大変な誤解をしているようだね。まず、第一に、『秘書としての失態』だと?冗談じゃない。これから君は私の前で一人の女産業スパイとして取り調べを受けようとしているのだよ。
いいか、よく聞くのだ。『女』『スパイ』として、だ。ところで君の知らない私の一面について、教えておいた方がよさそうだね。私は生来SMの趣味を持っているのだよ。SMだよ、SM。君だってSMが何かぐらいは知っているね。最近はOL向けの女性週刊誌にもよく載っているようだからね。だが、あんなのは、単なるお遊び、プレイだよ。これから君が味わう苦しみは、遊びなんかじゃない。とにかく、君の御蔭で、うちの社は少なく見積っても十億円以上の損失をこうむったのだからね。その分は十分取り返させてもらうつもりだ、その責め甲斐のある身体でね。
先妻の死後、空想世界で夢みるしかなかったハードなSMが今回の事件の発覚で、かねがね憎からず思っていた君を相手に、できるとはね。私はその点で君に感謝しなければならないかもしれない」
ここまできて私はようやく事情がのみ込めてきました。私は、いったんテープを止め、台所でティー・ポットに紅茶を沸かし、とびきり苦いのを二杯作り、一杯はその場で一気に飲み干し、もう一杯を、夫の書斎まで持って来ると、再びビデオ・デッキの前に座りました。喉がからからだったのです。夫好みの、あのつんと取りすましたような女が、これから夫の手で責められようとしている……、そう思っただけで私は身体中の神経、筋肉がこわ張ってしまうのです。
秘書にして会社に閉じ込めて置くのがもったいないような、無駄肉のないすらりとした四肢、同性の私さえ羨望の視線を投げかけたくなる豊かな胸、細く引き締まった腰、そんな長谷川さんを、夫は一体どう責めるというのでしょう。今まで夫が見せてくれたSMのビニ本の写真の数々が私の脳裏をよぎります。
その時私ははっきりと悟ったのです、夫との夫婦生活の間に、私が夫と同じ性癖、つまり、女を責める、女をいじめることに無上の喜びを感じる女に変えられてしまっていたことを。ビデオ・デッキの前で、二杯目の紅茶をすする私の乾きは、できることならあの高慢な女を自分の手で苛めたい、とことん泣かせてみたいという願望そのものだったのです。
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