本来であるなら、『太王四神記』は「チュモン神話」とのつながりを作るべきなのに、どうして、ドラマの中では、関連性の薄い「タングン神話」にまで遡り、広開土大王(タムドク)の歴史的正統性を語ろうとしたのだろうか?
そもそも、なぜ「チュモン神話」がカットされたのだろうか?
チュモンの権威とは、高句麗の始祖としての権威で、韓国史全体を貫く権威ではなかった。もちろん、韓国の三国時代において、もっとも強力な国家だった高句麗を建国したチュモンのことを歴史上の偉人として否定する人はいないと思うが、それは、朝鮮半島に存在した三国、高句麗、新羅(シラギ)、百済(クダラ)のうちの、一つの国家であることに変わりない。
その一方で、古朝鮮はどうだろうか? 古朝鮮も高句麗と同じように、朝鮮半島全土を支配した国ではないし、領土の広さから見ても、古朝鮮は高句麗よりずっと小さかったとされている。
けれど、韓国人にとって古朝鮮とは最初の古代国家であり、国の起源という意識が強いのだ。そういう背景からも古朝鮮を継ぐということは、韓国史上でも歴史的な正統性を持つことになったのだろう。
すなわち、「タングン神話」とよばれる古朝鮮の建国神話は、高句麗の「チュモン神話」のように三国のうちの一国の神話ではなく、韓国民族の起源を象徴する神話であるといえるのだ。
そうなると、神話時代の「ファヌン(桓雄)」は、古朝鮮を立てた壇君の父でありながら、広開土大王タムドクに民族的な正統性を与える存在となり、タムドクが高句麗に限られた偉人ではなく、韓国を代表するヒーローであるということも納得ができるであろう。